会議録は語る

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 6月1日の午後1時から行われた「衆議院文部科学委員会にて参考人質疑」の内容を、laazさんが聞き起こししています。この作業はとても大変なもので、私は途中で断念してしまいました(苦笑)。その御苦労に感謝いたします。
 全部については、衆議院のウェブサイトにある会議録に収録されるのを待つことにしましょう。

 この質疑では参考人としてエイベックス会長兼社長・日本レコード協会会長である依田巽氏が出席しています。その意見陳述から気になる点を書き出し検証したいと思います。

 昨年1月から11月までに日本レコード協会会員レコード会社が発売した邦楽アルバム4445タイトルの価格を分析いたしますと、2500円未満の価格のものが41.5%と最も多く、平均価格も2315円であります。

 Amazon.co.jpで現在発売中のJ-POPの一覧をざっと見ても2500円以下のアルバムを見つけるほうが大変です。半分近いアイテム数とのことですから、もっと頻繁に目にしてもいいはずです。これはどうもシングルの数も含まれているような…?

 次はAmazon.comで価格調査です。アメリカではPOPひとつとってもジャンルが多岐に渡り、どのジャンルが一番売れているかはちょっと私は知らないので、恐らく近いんじゃないかな、というGeneral およびPop Rockで当たりをつけてみます。
 依田氏の主張を有利にするため、割引価格ではなくList Priceで比較すると、おおよそ平均18$、安いものでは14$から高いものではCD5枚組みで130$というのも見受けられます。物価指数が異なるのであえて日本円には換算しませんが、List PriceではなくBuy newで見てみると平均14$になることを指摘しておきます。

 確かに欧米先進国の中でアメリカは日本より2割から3割程度安いと認識しておりますが、世界の62億人のマーケットを対象とするアメリカと、1億3千万人をマーケットとする日本との市場環境の差ですね、あるいは欧米に較べて豪華な仕様を好む日本の国民性などを考えますと単純に比較することは出来ないと思われます。

 市場規模の違いが価格を維持する根拠になっているようですが、別に日本は世界に向けての輸出を前面的に禁止しているわけではありません。そして、アメリカの全てのアーティストが62億人規模のマーケットの恩恵を受けているわけでもありません。あくまでも最大期待値だというだけで、ジャンルの隔たりやPRの範囲を無視して62億という数字を押し出すのは、不適切ではないでしょうか。
 今回の逆輸入措置は、10億人規模のアジアマーケットを標的にしたことが発端と言われてもいます。ということは、本来はそれに見合った価格設定を行うのが筋でしょう。いえ、それ以前にアメリカの音楽はアジアに輸出されていないとでも?
 …と、そんな回りくどい言い方をしなくても、フランスの価格を指摘すればいいだけなのではありますが。

 7年間というのは、わたくしどもが過去数十年にわたってリリースされたCD、レコードがライフサイクルで何年あるのかという科学的な数値もベースにして作り上げた7年間(という年数)でございます。で、実を申しますと私は50年を主張しておりました。それは著作権著作隣接権は50年であります。なぜその50年の権利を我々は7年まで詰めなければならないのかということについては、はっきり申しまして非常に不満です。

 改正後も7年間の禁止期間を50年間まで引き上げる気満々の依田氏ですが、この7年というのがどのような科学的根拠によって導き出されたかについては語られていません。
 恐らくは絶版に至るまでの平均年数だと予想しているのですが、実際のところはどうなのでしょう。損益分岐点を超えるまでの最長年数かもしれませんが、そのあたりのデータを集める必要があります。

 昨年1年間で日本の一番安いCDは300円からで、(これが)3300円までございます。

 300円で販売されたCDのタイトルが知りたいですが、まあ、そういう個人的興味は置いといて、シングルとして発売されている音楽CDへの収録数はおよそ2〜4曲。価格が1000円前後ですので、300円CDが1曲だけの収録タイトルだとすると、さほど安い価格だとは言えません。
 また、たぶん「一番高いCDでも3300円だぞ」という密やかな主張をされているのかもしれませんが、もちろん7000円を越える商品もあります。もっともこれはベストアルバムでCDの枚数も2〜3枚、収録数もそのぶん多くなっています。
 つまり、価格問題はCDタイトル自体の価格ではなく、収録曲数もしくは時間で比較しないと正確には計れません。もちろん、著作物の価格を時間で換算するというのはとても味気ないものですが、実のところ価格を決定するレコード会社が、その味気ない設定を行っている恐れがあるのです。いや、それ以前に各アーティストに支払われる著作権料は、まさに5分という時間単位で決められているのです。