文化財と著作権

http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2004053100070&genre=C1&area=K00

 京都新聞で連載されていた「Winnyの衝撃」の第5回で、社寺が保管する文化財という絡みで鳥獣戯画が取り上げられたことを発端に、世界最大規模の掲示板「2ch」が毎度おなじみの「いたずら」をトップページで開始しました。
 「2ch」のトップページといえば「壷」を思い浮かべる人も多いでしょうが、http://www.2ch.net/では以前から鳥獣戯画にロゴをあしらった画像を表示していました。京都新聞の記事で「知的財産権」「無断転用」「著作権侵害」という文字が並ぶや否や、鳥獣戯画を表示していたトップページには「ただいま、超著作権侵害中」というキャッチコピーが追加されたのです。

 京都新聞の記事全体は、文化財のデジタル化における現状を紹介したものですが、その記事で紹介されたアーテファクトリー社の社長と比較法研究センター理事長のコメントが、話の内容をこじらせてしまったように思われます。
 鳥獣戯画に限らず多くの文化財は著作物の範疇に属するものですが、制作された当時は著作権法はありませんし、当然著作者は50年以上も前に亡くなられています。著作物ではあるものの著作権は無く、本来は誰もが自由に利用可能な作品なのです。
 しかし、著作権は無くても文化財を管理している社寺には物品としての所有権を持っています。社寺は閲覧そのものを禁止したり、私有地に入ることを制限付で許可することなどで文化財を保護してきました。

 古い作品を朽ち果てないように大切に保管するには、それなりのお金を必要とします。その財源は拝観料であったり寄付であったり国や地方自治体の補助金だったりします。もちろん、文化財を写した写真などを本にして出版し、それら収益を保管料に賄うということもあります。ですが、いくら厳重に保管を行っても、物として朽ち果てていくこと自体は止められません。火災や不慮の事故、盗難などで傷ついたり消失してしまう危険性も常にあるのです。
 そのため京都国際文化交流財団をはじめ国や地方自治などで、文化財を劣化しないデジタルデータ化して永久に保存するという取り組みを進めています。と同時に、国立国会図書館の貴重書検索(http://www3.ndl.go.jp/rm/)のようにデジタル化した文化財を一般に公開することも進められています。
 ですが、このことが拝観者や関連書籍の売上低下などに繋がるのではないかということで、文化財保有者は保管に当てる財源を失ってしまう恐れに危機感を募らせています。また、高精度のデジタル化を行うための機器の費用はもちろん、デジタル後のデータ保管など、著作物に掛かる永続的な費用の財源にも対策が必要になってきています。

 著作物はその文化的価値が高まると、著作権法の保護期間以後もその保存などでお金が掛かってしまう側面を持っています。現在の著作権法はまだこのことについては何も触れられてはいません。
 文化財保護法等によって、何百年前の世界遺産的なものについては法律の保護を受けられますが、著作権が満期になった以後からは、遺産的価値が認められるまでの間、数多くの著作物は保護者無しの危険な眠りにつかなくてはならない状態なのです。