素材と著作権

「誰でもマンガ家になれる? ゲームキャラ画像をそのまま使うオンラインマンガ」 (http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040607-00000003-wir-sci)

 ゲームに登場するキャラクターのイラストではなく、ゲーム中に使用されるスプライト、いわゆるドット絵を用いてマンガにしたデビッド・アネズさん。もともとは「Bob and George」というオリジナルストーリーとのことですが、とりあえず絵のほうは間に合わせということでドット絵を借用し、後々自作の絵に置き換える予定でした。ところがいざ作画に入ったところ、自分には絵心が無いことを確信し、そのままドット絵を用いて作品発表を続けているとのことです。

 もちろん著作権法に照らし合わせてみれば、他人の著作物を無断で利用してウェブで発表しているのですから、結論から言えば味気なくも著作権侵害。論ずることは何も無い…と言うことは簡単です。でもこれは、もしかすると、新しい表現方法が確立する一歩手前の状態なのかもしれません。

 今でこそゲームの表現方法は3Dが中心ですが、一昔前は決まった大きさのドット絵の中に登場人物や背景を描いて表示するのが一般的でした(今でもそうだ! という人の声が聞こえてきますが気にしない)。これはゲーム機の性能があまり高くない中、少ないメモリで多彩な表現を行おうとした、ゲームクリエイターの工夫の産物と言えます。
 初期の頃はとにかく区別がつけばいいという程度のものでしたが、3Dが当たり前に使われる頃になる直前では、ある種、芸術品に近い出来上がりなまでに昇華されていました。とくに世界そのものが描かれることの多いRPGでは、ドット絵だけでまるで映画のような演出にまでなっている作品もありました。背景には生活用品が細々と描かれ、登場人物も数に限りにあるドットの中で表情や感情すら表現されています。

 こうした高度なドット絵を用いて、ゲーム画面のような表示形式でありながら、セリフ回しはマンガの形式を用いるというのが、先に紹介したデビッドさんの表現方法の方向性です。
 当然ながら他人の著作物を扱うには許諾などが必要ですが、ドット絵を自作するなり利用が自由なゲーム用素材(質の高いものがかなりの数で提供されています)を用いれば、この問題はいとも簡単に解決するのでは、と思う次第です。