標的となる中古市場 (1) - 中古市場の意義

 来年1月から施行されるレコードの還流措置は、条文の適応範囲を変更することで、中古市場を規制する法律となる可能性を持っています。還流措置の適応範囲は「国内用と国外用という異なる頒布元がある"レコード"」ですが、これを「著作権者から直接頒布した"著作物"」と「客から買取り中古業者が再販売する"著作物"」とすることで、適用条件は変更せず中古市場を標的にすることができるのです。

 多くの著作権者は、中古市場が新規の著作物の購入を控えさせ、本来権利者が得るべき利益を不正に得ていると考えているようです。たしかに販売当日に中古店に並ぶ商品を見れば、新品の購入を妨害しているように思われます。実際のところ、中古販売が禁止されていれば、ある程度の新品の売上増加は期待できるのかもしれません。

 しかし、文化の発展という側面からすると、大多数の作品が大体にして安く入手できる中古市場が無くなれば、人々はより多くの作品を手にする機会を失います。これは、数多くの作品を知ることでしか得る事の出来ない「作品を理解する上での土壌」を失うことに他なりません。正しい評価を得ることの無くなった市場は、良作を生み出す力を失い、やがて衰退していくでしょう。

 市場で販売される作品の価格は、作者自身の評価を含みますが、大部分は頒布と流通などの都合で決定されます。その価格と、受け手側が評価として想定する価格は、鷹揚にして食い違うことが常であると言えます。適正と思えば新品で買うでしょうが、そうでなければ、その想定に見合う中古品を求めることになるでしょう。ただし、中古品も売り手かなければ中古市場に並ぶことはありません。作品が多大に評価され、所持したいと多くの人が思った作品は、中古市場にはなかなか並ばないものなのです。