標的となる中古市場 (2) - 土壌を育む中古市場

 人が作品を面白いと感じるには、その作品を理解する素養が必要となります。それは数多くの作品に触れる事でのみ培われるものであり、とくに良作でなければいけないという事はありません。つまらないと感じた作品からでも、他の作品を評価する素養は培われるのです。もちろん、ただ数さえ多ければいいというものでもありませんが…。

 中古市場は、長期間に渡り作品を流通させ、その商品の大多数を安価でもって読み手に提供している、現状で唯一の市場です。売り手にとっても、作品を手放すことによって新たな作品を手にする機会を得ることが出来、作品を理解するための土壌を育む場としては、図書館に匹敵する機能を持っていると言えるでしょう。

 日本の著作権法では、第1条の目的でもって「…これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする」と宣言しています。これは著作者等の権利保護は最大限に発揮されるべきものですが、同時に文化の発展に寄与するためには、権利は少なからず制限されることを意味しています。

 文化の発展には読み手側の理解度の向上は不可欠であり、著作者等の権利、とくに利益面のみを保護することは、読み手側が触れる事の出来る作品数の低迷を招き、よって理解度が低下することにも繋がりかねません。中古市場は一見、著作者等に対して損害を与えるだけのものに見えますが、権利者から離れての客観的な評価でもって作品を幅広く提供し、読み手の理解力を向上させているという点で、文化の発展に寄与していると言えるのです。