洋楽ファンだけの問題じゃない

 来年の一月一日から施行される改正著作権法ですが、邦楽CDの逆輸入防止措置の悪影響が、洋楽のみに起こると考えるのは軽率です。結局のところは競合する安価なCDが排除され、日本の音楽業界は「音楽CDの値段はこのまま変えずに済む」というお墨付きを、著作権法で得たということに他ならないからです。
 「価格競争に費やされる努力が、作品の質の向上に注がれるのだからいいじゃないか」という意見もありますが、その作品の質を推し量るファンの耳は、数多くの音楽を繰り返し聞き、そしてその作品を批評することによってのみ培われます。

 自由に使えるお金には限りがあります。ましてや昔とは比べ物にならないほどに娯楽が溢れ、そこに費やされるお金も増えています。それなのに音楽の値段が変わらないのであれば、必然的に嗜める曲数は限られてしまいます。異なるアーティスト、異なるジャンル、異なる国の曲…その幅が狭まってしまえば、音楽ファンは音楽というものを理解し得なくなってしまうでしょう。そして人は音楽に飽きてしまうかもしれないのです。

 価格競争による低価格化は、必ずしもアーティストや音楽出版社の利益を減らすものではありません。使用機材の高性能化に伴う対費用効果の向上、パッケージとしてのCD媒体の多様化などによって低価格化は可能なのです。現にアジア向け音楽CDは多少ライセンス料金の違いはありますが、十分な低価格化を実現しているのですから。